建設キャリアアップシステムとはどういうもの?必ず加入するの?
建設キャリアアップシステムは、建設業を将来にわたって持続させ、若い世代の担い手を確保・育成するシステムです。技能者の資格、社会保険の状況、就業履歴などを登録することで、「品質向上」「業務の効率化」「人材の適正な評価」へと繋げるために設けられました。この記事では、システムの概要や導入メリットなどについてご紹介します。
建設キャリアアップシステムとは
建設キャリアアップシステムとは、具体的にはどのようなものなのでしょうか。概要に入る前に、まずはシステム構築の背景から把握すると理解しやすいでしょう。
システム構築の背景
日本の労働者人口が減少するなかで、担い手の確保はどの業界においても課題となっています。
他の産業と比較して魅力的であることをアピールして若年層を取り込もうとする動きのひとつとして、建設業では一人ひとりの能力を適切に評価し、スキルアップが処遇の工場につながるシステムを構築することになりました。
それぞれの技能者の経験や技能に関する情報を建設業界統一のルールで蓄積し、処遇の改善や技能の向上につなげることで、若手の将来のキャリアアップの道筋を目に見える形にしたものです。
2019年4月から運用を開始し、業界の団体と国が連携しながらシステムの普及を推進しています。
目的
主な目的としては、企業が成長できる「業界の環境」を作ることです。技能者に応じて適正な処遇の改善を図り、技能者を雇用・育成することで、業界全体の環境構築を目指しています。
システム概要
事業者は商号や所在地、建設業許可に関する情報などを、技能者は個人情報や資格、社会保険の加入状況など、現場情報として現場名や工事の内容、施工体制などをシステムに登録します。
登録が完了すると技能者に有効期間10年のカードが交付されます。現場に入る際にカードリーダーでカードを読み取ることで情報が蓄積されます。
建設キャリアアップシステムを導入するメリット
申請や導入の仕組みが複雑に見えるシステムですが、技能者だけでなく事業者にもメリットのある制度です。
技能者のメリット
すべての現場共通でカードリーダーにかざすだけで技能や経験が自動的に蓄積され、データは電子的に保管されます。いつどの現場で作業をしたかシステムにすべて記録されるため、建設業退職金共済制度の証紙の貼付状況の確認が簡単にできるので、適切な退職金が受け取れます。
現場で事故に遭った場合や、建材や溶剤などで健康被害が起きた場合にも、就業証明として活用できます。自分の技能や経験、資格などの経歴が記録されるため、客観的な証明になります。
また、建設業をいったん離れる場合にも、理力以前の経歴や資格が簡単に確認・証明することが可能です。
事業者のメリット
事業者は複数の現場における就業状況や、現場の状況を一元的に日単位で確認できることにより、管理の効率化が図れます。工事完了後もどの現場でどの技能者が作業していたかがわかるので、現場のコンプライアンスが確保できます。
技能者を採用する際に現場での経験や資格の取得状況を確認でき、顧客に対しても技能者のスキルをアピールできます。業界統一のシステムを構築しているので、独自の就労システムを構築するよりもコストが削減できます。
また、システムに登録したすべての技能者や事業者が閲覧可能なため、事業者登録していることで信頼を得ることができ、優良な実績があれば新規受注が期待できます。
建設キャリアアップシステムの利用方法
事業者と技能者どちらにもメリットのあるシステムですが、申請方法や運用が難しいのではないかと不安に感じている人もいるかもしれません。それぞれの利用方法について見ていきましょう。
技能者
インターネットか郵送、窓口申請から選び、必要な情報を建設業振興基金に送ります。申請方法に応じた登録料を支払うとカードが発行され、登録が完了します。現場に入るごとに就業履歴を蓄積することで経験が可視化できます。
事業者
技能者と同様の登録方法で申請し、事業者IDが発行されたら登録完了です。元請の場合、事前に組織情報の登録や管理者の設定をし、現場や施工体制を登録します。就業履歴蓄積の使用料は元請け事業者が支払います。下請の場合には施工体制を登録することで、技能者の就業履歴のデータが蓄積され、経験の見える化ができます。
まとめ
現在建設現場における技能者の数は、60歳以上が全体の約25%を占めており、10年後にはその大半が引退すると見込まれています。若手技能者の確保や育成の課題は、建設業界におけるクラウドシステムである、CCUSの導入により解消されるでしょう。技能者の資格や経験が可視化されることで、事務作業などの効率化に繋がり、技能者は適正な処遇を受けることができます。登録は任意とされていますが、システムを導入するメリットは、技能者と事業者どちらにもあります。建設業が地域の守り手として、将来にわたって持続的な役割を担うために必要なシステムです。